炸裂よっ。とか言いながら壁を歩こうとしてる人がいたらおともだち。

　狂っている設定には何らかしらの引力が存在する。

　京極堂シリーズの根幹を成すであろう気の病いしかり。

　ブギーポップ、あるいはタイプムーンで語られる欠陥しかり。

　そしてマルドゥック・ヴェロシティにおける異形と異常行動しかり。

　表立っては明らかにされていないものの、実に陰惨さを匂わせるものであったり、逆に最初からその欠陥は出来損ないのものである、と明らかにされていたり、そうした異常性は拒否感を引き起こしつつも、なぜか人の心を掴んで離さない。

　ヴェロシティは、そうしたものの固まりであったように思う。その上でストーリーに深みを持たせているがゆえ、決して読むのを止められない出来になってしまった。

　この物語にでてくる出来事の一つ一つは醜怪である。

　それが全て合わさる時、なぜか娯楽として成り立つことこそが、引力と言う奴ではなかろうか。